最近のクルマのLED打ち替えはできるのか?

スイッチやメーター照明、イルミネーションに使われるLED(発光ダイオード)。
高性能化した最近のクルマでもLED打ち替えができるのだろうか。

実際に部品を分解して、その可否を探ってみた。

LEDの打ち替えは、安価にできるカスタムだったが・・・

その昔、コンソールのスイッチやメーター照明の色を変える「LED打ち替え」のカスタムが流行った。

「LED打ち替え」とは、元々のLEDを外し、別色のLEDへ換装すること。

緑やオレンジ一辺倒のイルミネーション色を変えることで、メーカーお仕着せの見映えを変え、ちょっとした個性を出すことができる。

まあ、ちょっとした自己満足に浸れるわけだ。

当然、メーカーとしてそんなことは認めておらず、あくまでも自己責任で行う改造になる。

下は10年ほど前、旧デリカD:5のメータ部分のLEDを打ち替えたものだ。

オートクルーズ表示のLEDを白に、インフォメーションディスプレイのバックライトLEDを赤から青に変更した。
(インフォメーションディスプレイは、その後のマイナーチェンジでカラー化されてしまったが。)

これだけでも結構、雰囲気が変わる。運転していて、ちょっといい気分になれる。

しかし、最近のクルマでLED打ち替えはできるのだろうか?

電子化が進み、電装関係も更に複雑になった。

各種安全機能や操作機能が多くなり、LEDひとつ交換するのにも躊躇する状況になってきているように思う。

ヘタをすると、電装系を壊したり、最悪、制御用コンピュータを壊してしまうリスクも増える。

なにしろ最近のクルマはコンピュータ、半導体が満載され、「電子頭脳」が走っているようなものだから。

半導体が無ければ、クルマの生産さえ停止してしまうご時世である。

ひょっとすると、使用されるLEDも更に極小になって、人の手に負えなくなっているかもしれない・・・

そこで、最近のクルマに使われているLEDはどんなものか、LEDの打ち替えは可能なのかを探ってみたわけだが、結論から先に言うと、現在も旧来のチップLEDが多用されており、打ち替えは可能と判断できた。

クルマに使われているLEDたち

クルマに使用されるLEDは多い。
最近のクルマはヘッドライトやフォグ、ブレーキランプなどLED化がどんどん進んでいる。

試しに最近のトヨタ車のヘッドライトを分解してみると、下記画像のような構造になっている。

ギザギザの金属板が放熱板。
ロービーム用、ハイビーム用のもので、いずれもLEDだ。

放熱板を外してみると、LEDチップが1つだけ取り付けられていた。
あれだけの光量を出すのだから、いくつかのLEDチップで構成されているんだろうと思いきや、なんと1チップなのである。

これだけLED性能は上がっているというわけだ。

LED化のメリットは大きい。省エネと高寿命、高い応答速度である。

ヘッドライトでは、昔の車で使用されたハロゲン球は、電力が光ではなく熱としても多く消費されてしまう。寿命も短い。

HIDも効率は良いものの、応答速度が少々劣る。(オンから最大光量になるまでに時間がかかる。)

LEDヘッドライトは、これらの問題点を改善できるわけだ。

車内にもLEDが多用されている。

熱も無く、発光色も多彩なため、コンソールのスイッチやメーターパネルの照明、スポットイルミネーションにも使われる。

室内灯もLED化された車種が多くなってきた。

下はスポットイルミネーションの発光部分。
部品モジュール化されてはいるが、それをさらに分解すれば汎用的な砲弾型のLEDが使われていたりする。

使われるLEDの新旧

今回は、イルミネーションや照明用LEDの打ち替えの話だった。ちょっと横道に外れてしまったので話を戻そう。

車内でスイッチやメーターに使用されるLEDは「チップLED」と呼ばれる小さなLEDが使用されている。

光量や照射範囲、照射方向によって、使用されるチップLEDも数種類が使われるようだ。

チップLEDは、下の画像のように大きさの違いが主な特徴だ。
また、発光色も多彩になり、アイスブルーとかローズピンクなんて色もある。

 出典:エルパラ

ちなみに、”3528”とか”1608”とかは、各辺の大きさを表している。
”3528”は3.5mm × 2.8mm、”1608”は1.6mm × 0.8mmと思っていただければよい。

1608サイズは米粒よりも小さい。老眼の人間にとって、驚異の存在となる。
1005サイズなどは、床に落としたら最後、二度と見つからない。

昔の車に使われているチップLEDは比較的大きなものも多い。

例としてこれまでLEDを打ち替えてみた基板が下だ。

これは最初に紹介した旧デリカD:5の初期モデルのメーターパネル。(旧デリカD:5は2007年1月発売)

緑枠で囲んだ部分がメーター照明用LED、黄色枠が各種インジケーター用LED、青矢印がインフォメーションディスプレイ用のLED位置。

どれも3528サイズの大きなチップLEDを使用しているので、打ち替えは楽。

しかし、下のエアコンパネルなど、小型の基板には1608サイズの小さなチップLEDが使われていた。
(青〇は換装したLED。手持ちがなかったため、1608サイズを2012サイズへ変更している。)

1608サイズだと、かなり小さくなるので、打ち替えの難易度は上がる。

続いて、トヨタ iQのメーターパネル。(トヨタ iQの発売は2008年11月)

LEDの数がやたら多いが、こちらも3528サイズのチップLEDを使用している。
これの一部分のLED打ち替えをおこなった。

では最近使われているLEDはどういうものなのか探るため、部品を分解してみることにする。

下の画像はトヨタ車で汎用的に使われている、革巻きステアリングである。

ステアリングには、機能スイッチが集約されることが多くなっているが、これも両サイドに多くの機能スイッチが配置されている。

メディアコントロール、電話、運転支援機能のスイッチなど。

ただ、これらのスイッチ照明は単一のアイスブルーなので面白くない。

スイッチ部分の基板を取り出すとこんな感じ。

黄色〇がチップLED。1608サイズを使用していた。
予想では、更に小さい1005サイズかと思ったがそうではなかった。

LED部分を拡大。これならば、まだ打ち替えができそう。

ちなみにスイッチ側はこのような構造で、半透明になっており光を拡散させ、ムラのない照光ができるようになっている。

LED打ち替えは「匠の技」が必要か?

チップLEDの打ち替え方法のノウハウは、ネットで検索すればいろいろヒットすると思う。

肝は、いかにすばやくチップLEDを取り外し、そしてすばやくかつ正確に取り付けるかだ。
そして、できるだけハンダの量が少ない方が良い。

チップLEDは基板に表面実装され、両端をハンダで固定されている形になっている。

取り外しの時、ハンダゴテで片側を温め、ハンダが溶けたらもう片方を・・・というやり方では、ハンダゴテを離したとたんハンダが固まり始め、いつまで経ってもうまくいかない。

チップLED取り外しは、ハンダゴテ二刀流で

そこで、ハンダゴテを2本使用するやり方をお勧めする。

2本のハンダゴテで一気にチップLEDの両側をハンダを溶かし、溶けたとたんにチップLEDをずらしてやる方法だ。

こうすれば、いとも簡単にチップLEDが外れてくれる。
しかも短時間の加熱で済むためチップLEDや基板パターン(ランド)も傷めない。


 出典:エルパラ

チップLEDの取り付け

次に、チップLEDを取り付ける際は、小さく切ったハンダをチップLEDの片側に置き、チップLEDをピンセットなどで、軽く押さえながらハンダを溶かす。
これで片側のハンダ付けができたので、もう片方をハンダ付けすれば簡単に取り付けが完了する。

くわしくは、1608サイズを大量にハンダ付けした記事があるので参考にしていただきたい。

オーディオスペクトラムディスプレイキットを作ってみる

このような方法を使えば、たとえ相手が1608サイズだったとしても、ヒマとやる気と視力があれば打ち替えは可能だ。
(老眼の人(わし)は更に度数の高い老眼鏡か、老眼鏡を2つかけて作業するとよい。)

只、愛車の部品を引っ剥がしてきて、いきなりLED打ち替えはリスクが高い。

どこかで中古の部品を探してきて、まずは練習するのが良いかと思う。

チップLEDの打ち替えにあたり注意することがある。

まずは取り付ける極性。LEDには必ずアノード(+側)、カソード(-側)がある。
これを間違えると、点灯せず泣きを見る。壊れることは無い。

チップLEDを外す前に、どちらがどちらなのか極性を確認しておくのがモアベター。
(基板に A、K と書かれている場合もある。)

取り付けるチップLEDも極性を確認しておくことだ。
(LEDの底などに極性を示す記号が表記されている。)

もしくはLED点灯チェッカー(LC-LED1)などでチェックするのも手。

LEDの明るさが違う場合が

打ち替えにあたり、LEDの色によってVF値(点灯させるのに必要な電圧)が違うものがある。
(カーナビやオーディオ機器に多い模様。)

もともとVF値の低いLED(1.8V程度)がついていた場合、VF値の高いLED(3.2V~3.6V)に換装すると、暗すぎて、見えない状態になる。

この場合は電流制限抵抗(これもチップ部品)の値を変えるか、LEDをVF値の低いものに変更するしかない。

逆に、打ち替え後明るすぎる場合は電流制限抵抗の値を変える手もあるが、面倒くさいので別の裏技がある。

黒マジックインクで発光部分を少し塗りつぶすという手だ。

塗りつぶす加減は、明るさを見ながらという、なんとも雑な手であるが、意外とイケるのである。

また色マジックインクを塗れば、真っ白LEDに少しだけ、青を足すという芸当もできる。

LEDの入手ルート

チップLEDはホームセンターや街の電気屋さんで売っていないので、ネットでの購入になる。

秋葉原や名古屋大須、大阪日本橋に近い人は、お店に行く手段もあるが、このコロナ禍の時世、あまりお出かけにならないほうがよろしいかと。
(京都寺町にもパーツ屋があったが、絶滅してしまった。)

以下に代表的なネット通販店を載せておく。

LED PARADISE☆エルパラ

海渡電子

秋月電子通商

マルツ

また、Amazonや楽天でも入手可能なものもある。
但し、価格があてにならない(いい加減)場合があるし、パッケージ当たりの数量が多いので、よく考えて購入することをお勧めする。

またサイズ違いでも、使える場合がある。
例えば、1608サイズの代わりに2012サイズが使える場合が多い。

好きな色が、1608サイズにはない場合、代わりに2012サイズを使う手がある。

おわりに

LEDの打ち替えなんて、クルマに興味の無い人から見れば、「あっそう、ふ~ん。」で終わってしまいそうなこと。(うちの娘と嫁さん。)

しかし、当の本人は、その苦労と美しさをドヤ顔で熱く語るわけで。

クルマにこだわる人は、LEDの色ひとつ違うだけで、何か喜びを感じてしまうのだ。

しかし、いちばんの難関は、LEDが載っている基板に行きつくまでに、かなり内装を分解する必要があること。

内装の正しい外し方なんて、資料が無ければ、巨大なパズルゲームをやっているようなもの。

ステアリングの取り外しなどは、ちゃんと処置しておかないと、エアバックの誤動作で大怪我する可能性すらある。

どうしてもLED打ち替えをしたいが、自分にはちょっと無理という方には、LED打ち替えを行ってくれる業者もあるようだ。
まあ、それなりのご費用となりますが。