データ復旧ソフトウエア「MiniTool Power Data Recovery」を使ってみる

今回は、ディスクやSDメモリカードなどからデータ復元ができるソフトウエア「MiniTool Power Data Recovery」を使用してみた。

大容量ディスクの異常は怖い

数年前にUSB外付けハードディスクで大規模なファイルシステム異常が発生したことがあった。

原因は、USBポートの異常(恐らくUSB3.0ポートの奥側接栓接触不良)。

(安いパソコンケースは品質の良くないUSBコネクタを使っていることがあるようで注意が必要)

ハードディスク自体は問題はないのだが、データを書き重ねる内にファイルシステムの不整合が進行していったようだ。

異常時、メディア(SSDやHDD、SDメモリカードなど)に目が行くが、インターフェースの不調でも不具合が発生することも頭の隅に入れておくべきだ。

異常を起こしたのは4TBのハードディスク。写真やブログ記事、画像素材が入っていた。
これが壊れると少々痛い。バックアップは取ってあったが最新のものではない。

最終的にCHKDSKを使ってファイルシステムの修復をおこなったが、結果としていくつかのファイルはロストしてしまった。

CHKDSKの修正モードは強制的にファイルシステムの辻褄合わせをしてしまうため、ファイルが削除されたり、迷子のファイルがlost+foundのフォルダに集められることになる。

「found.xxx」というフォルダが作成され、その中に「破損しているけど読めたファイル」や迷子になっていたファイルが格納される。

最近のメディアは大容量化し便利ではあるが、一旦おかしくなると、その影響は広範囲なものになる。

平穏無事な日々が続くよう祈りを捧げるのが良いかもしれない。

フリー版(無料版)のデータ復旧ソフトウエアは使えるか?

実はCHKDSKを使用する前にフリー版のデータ復旧ソフトウエアも試してみた。

問題のハードディスクをスキャンしてみると、かなりの時間を要したが、多くの破損、迷子ファイルを見つけてくれた。

「これはうまくいくかも」、と内心ほくそ笑んだのも束の間、それは叶わぬ願いだった。

実は、ファイルの発見はしてくれるものの、無料版では一定量のファイルしか救い出すことできないのだ。

つまり救い出すデータ量の制限がかかっており、データ量が多いと、”これ以上は有料ライセンスを買ってね” とメッセージが表示される仕組みになっている。メーカーさん、なかなかうまい手を考えたものです。

もちろん有料ライセンスを取得すれば良いのであるが、その時はそこまで必要とは思わなかった。
なぜなら、救い出せないものは仕方がないと素直にあきらめることにしたからだ。
(バックアップがあったことも被害を軽くできた。)

その時に使ってみたのが今回の「MiniTool Power Data Recovery Free版」だった。

では、もし有料ライセンス版で救済を試みたらどうなっていただろう?

今回は、「MiniTool Power Data Recovery」の有料ライセンスを入手し、その機能を試してみた。

※ 本記事では、データとファイルという言い方を併用しているが、同義と捉えて頂きたい。

MiniTool Power Data Recoveryを試す

インストール

インストールについて簡単に触れておく。

「MiniTool Power Data Recovery」のホームページにある「ダウンロード」をクリック。

MiniTool® データ復旧ソフト

ダウンロードしたファイル「pdr-free-online.exe」を実行、インストール画面が表示される。

ここで、”今すぐインストール”をクリックしてもよいが、もしインストール先を変更するなら、右下の”カスタムインストール”をクリックする。

わしの場合、Program Files2というフォルダを勝手に作って、フリーソフトウエア類は、なるべくそちらに入れている。
そうすると管理や削除するときに楽なのだ。

”今すぐインストール”をクリックすると、注意が表示される。
内容は、「異常になっているドライブにインストールしないでね」というもの。

例えばシステムドライブであるCドライブに問題がある場合、「そこへインストールすると、さらに問題を悪化させるよ」という警告だ。
そりゃそうだろ、お腹をこわしている人に、更にご飯を食べさせるようなものだ。

もしCドライブのある物理ドライブに別の論理ドライブを切ってある場合、そこへのインストールも避けた方がよさそうだ。

なぜなら、もし物理ドライブのハードウエア異常が原因である場合、Cドライブ以外も影響を受けている可能性があるから。だから別の正常な物理ドライブへインストールした方が良い。

ちなみにインストールされるプログラムサイズは約211MBだ。

続行するとファイルがダウンロードされセットアップがおこなわれる。

”インストールが完了”が表示され、フリー版が使用できるようになる。

同時にブラウザにインストール完了のメッセージが表示され、有料ライセンスの購入を促すメッセージも表示される。

使ってみる

今回は異常を起こしたハードディスクが手元に無かったため、異常を起こしたSDメモリカードにご登場頂いた。

これは32GBのSDメモリカードで、屋外監視カメラのデータ格納用と使用していたものだが、なぜかファイルシステムが壊れてしまっている。
(ブロックの読み出しに問題がないことは別のツールで確認済。)

これをDドライブとして接続した。

「MiniTool Power Data Recovery Free版」を起動すると、まず接続されているディスクを認識し、一覧が表示される。

USB接続のディスクやSDメモリカードは起動する前に接続しておくと良い。(起動後でも認識可能。)

ドライブを選択し、”スキャン”をクリックすると、ドライブ内のファイルスキャンが始まる。

これが結構時間がかかる。32GB SDメモリカードでも数時間を要した。
数TBのディスクなら、数日を要することになるかもしれない。

もしパソコン2台以上お持ちならば、サブ機や省エネ機での実行をお勧めする。

他のお仕事をしながら、背後でファイル回復ツールが長時間動いているというのは、あまり気持ちの良いものではない。

スキャンが終了すると、ファイル保存の選択画面になる。

今回は全てを保存するので ”すべて選択” にチェックを入れて、”保存”をクリック。

このあと保存先を入力する(正常な別ドライブを指定する)。
すると、”復元中:・・・” となり、拾い上げたファイルの格納が始まる。

ここで、うまくいくだろうと思いきや、次の画面が表示された。

”アップグレードしてさらに回復を続けます 無料回復が残っていません”、オーマイガットである。

つまり、無料版での復元できるファイル量の1GBに達してしまったのだ。

これはやはりがっかりする。回復量はせめて5GBぐらいにしてほしいものだ。

今回は有償ライセンスを購入するので、”回復を続けます”をクリック。
すると、有料ライセンス購入のお誘い画面が表示され、ライセンスコード入力欄が表示される。

価格はサブスク版でもかなり高額。せめて、「月間サブスクリプション」はもう少し価格を下げてもいいんじゃないだろうか。
なぜなら、恐らくこれを選ぶ人は、緊急事態で数回使うだけだろうし、そう頻繁に使うわけではないだろうから。

まあ、データ回復業者を利用するよりは遥かに安いだろうけれど。

有償ライセンスを購入しライセンスコードを入力して「登録」をクリックする。
すると、”ありがとうございます。”のメッセージが表示され、めでたく制限のないライセンス版となる。

続行すると、最初からファイルの格納が始まる。途中からの続行じゃないんですよ、奥さん。
(格納先に別フォルダが作られる。)

終了すると、”回復が完了” とメッセージが表示される。

”保存”で指定したフォルダには回復ファイルが格納されていた。

中には意味不明なファイルもあったが、監視カメラの動画ファイルは無事確保できたようである。

データ復旧ソフトウエアの存在意義

データ復旧ソフトウエアの主な用途は、消してしまったファイルの復活や、フォーマットしてしまった媒体からのデータ復元、ファイルシステム異常時のファイル救出であると思う。

うれしいことに、この類のデータ復旧ソフトウエアはさまざまなメーカから発売されていて、性能、機能は各社しのぎを削っているようだ。

只、できることに大きな違いはないように思われる。

キモとしては、速度(パフォーマンス)、対応能力(どれほど難しい状況から多くのファイルを救い出してくれるか)、そして価格とサポートだろう。

わしが最も重視するのが対応能力。

もしディスクがハードウエア障害や論理エラーを起こし、データがまともに読み出せなくなってしまった場合にどれくらいファイルを救い出せるかだ。

論理エラーはまだ救いの手があるとして、問題はハードウエア障害。

これまで多くの障害対応をおこなってきたが、不良ブロック・バッドスポット、ヘッドシーク異常、スピンドル回転異常、制御基板の故障、コネクタ接触不良、プラッタへのヘッド吸着など・・・
問題発生時のOSの挙動も様々であるし、不良原因も多種多様となる。

こういったときにどれだけ性能を発揮できるかがデータ復旧ソフトウエアの価値であると思う。

メディアをOSから認識もできない状態では、データ復旧ソフトウエアも手の出しようが無いが、そうでない場合、このツールの意義は大きい。

本当は、各社のデータ復旧ソフトウエアの味比べをしたいところだが、貧乏人には無理なので、それは口コミ、評判、人のうわさで判断するしかない。

各社、どこまでデータを拾い出してくれるのかが見ものである。

おわりに

昔はバイナリエディタなどを使用して管理領域を直接書き換えるなんていう力技、職人技もあったが、それはまだファイルシステムが簡単で小さかった頃の話し。

今や各種メディアは大容量化し(最近では30TBの3.5インチHDDもあるらしい)、そんなことは専門業者でしかできない。

何かあったとき、CHKDSKは信用できないから、こういったデータ復元ソフトウエアを使うのがベストな選択だろう。

今回の「MiniTool Power Data Recovery」は簡単な操作でファイルを救えるとても有用なツールだ。

先に書いたように、フリー版では救出できる量が少ないところが残念な点だが、とりあえずフリー版でスキャンしてみて、うまくいきそうなら有料ライセンスを購入するというのもありだろう。
有料ライセンス版ならRAWリカバリーも可能である。

またフォルダ単位でのスキャンなど他の使い方もあるので、状況に応じて使い分けるのが良いと思う。

ひとつ注意として、重要なディスクで異常が発生した場合は、必ず物理コピーやソフトウエアのクローンコピーを使ってオリジナルディスクのコピーをとっておくこと。
いきなり異常のあるディスクに手を加えると取り返しのつかない結果を招くことがある。
バックアップがあれば、まあどうにかなる・・・かも。

それと、最近はディスクを暗号化(BitLocker)する運用も増えてきている。
暗号化されたディスクはあらかじめ暗号化を解除しておかないとデータ復旧ソフトウエアは対応できないので注意だ。