2液ウレタンスプレーの構造を調べる

🐰 2023年 あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いします 🐇

さて今回は、使い終わった2液ウレタンスプレーを「あけまして」、その構造を調べたお話。

普通のブログなら、美しい塗り方とかノウハウを書くのだろうが、この偏屈ブログは謎めいた2液スプレー缶の仕組みに迫ってみた。

分解マニア

モノの構造がどうなっているか知りたいという思いに囚われたことはないだろうか。

だいたいの想像がつくものもあるし、いったいどうなっているのかとても興味をそそられるものもある。

分解してみると、予想していたものと違っていたり、こんなアイデアで実現してるんだ!と巧妙な仕組みに驚かされることもある。

わしも内部構造や仕組みを知りたがる分解マニアである。

最初に分解の記憶があるのはカメラ。

小学校低学年の頃だった。
たぶん、ドライバがどこかにあったのだろう、使われず押し入れに仕舞いこまれていた古いカメラをバラバラに分解した記憶がある。

当然、元には戻せなかったけれど、これがとても面白かった。
ゴミと化してしまったが、意外に叱られることもなかったのが今も不思議。

ゲルマニウムラジオも分解してみた。

どうしてこんな簡単な箱から音楽や音声が聞こえるのか不思議で仕方がなかった。

端子を電源コンセントに挿して聞いていたから、その頃は電灯線に音楽や音声が流れているんだと信じ込んでいた。
それが、コンセントをアンテナとして使用していたことが分かったのは随分後になってからだった。

今でも、アマゾンで「ゲルマニウムラジオの組み立てキット」を売っているのには驚いた。

まあ、そんな経験で、分解・組み立てはお手の物となり、仕事や趣味の世界へつながっていったわけだ。

「2液ウレタンスプレー」の構造も以前から興味をそそられるものだった。一度分解してみたかったがやっとそのチャンスが来た。

2液ウレタンスプレーとは

では、2液ウレタンスプレーとは何か?

2液性とか2液混合型とか言ったりするが、塗料、溶剤と共に硬化剤が缶内に封入されており、硬化剤の封を破ることでお互いが混ざり、塗装スプレーとして使用できるものだ。

(ホームセンターなどで売られている2液ウレタンスプレー)

今回分解したのは、中央のイサム塗料「イサムエアーウレタン 二液内部混合型スプレー」。

「イサムエアーウレタン」は1988年に、日本で初めて「2液性エアゾール」として開発、製品化に成功したものだそうだ。

面倒な、調合作業やエアーコンプレッサー、スプレーガンなどの道具が要らず、お手軽にウレタン塗装が行える。

2液性のウレタン塗料は一般のアクリル系塗料に比べ比較的強靭な被膜が形成される。

これは、アクリル系塗料は溶剤が蒸発することによって塗装膜が形成されるが、それとは違い硬化剤による化学反応によって塗装膜が形成されるため。

このため、石油系やアルコール類の溶剤に強い。
(※アクリル系にも2液性のものが存在するが、市販ではほとんど見かけないようだ。)

(下はクルマのPP樹脂ガーニッシュにアクリル塗装し、ウレタンクリアーを上塗りしたもの)

しかし、硬化剤を使うというのは弱点でもある。

硬化剤が混ぜられた瞬間から硬化反応が進んでゆく。長期間の保存が効かないのだ。
「その日のうちに使い切ってください。」というのがメーカー側の推奨文句になっている。

使い切れず缶内に塗料がまだ残っていても、次の日には使えませんよということだ。

以下はメーカーの塗装条件。

  初期乾燥30分
  初期硬化乾燥60分
  完全乾燥時間78時間(気温20℃・湿度65%)
  塗り重ねは10~20分後
  冬期5℃以下の気温では硬化反応が大幅に遅れますので塗装しないでください。

逆に「冬期5℃以下の気温では硬化反応が大幅に遅れます」というのを逆手に利用すれば、長期に保存できる可能性もあるということだ。

これは混合後のスプレー缶を布やビニール袋でくるみ、冷凍庫で保管するという技。

一カ月程度は余裕で、数か月でも保存が効く場合があるらしい。

もちろん使用時は常温に戻す手間はあるが、高価な2液ウレタンスプレーを使い切ってやろうという御方には試してみない手は無い。

2液ウレタンスプレーの仕組みを調べる

分解

さて、話しがずいぶん遠回りをしてしまったが本題の分解による内部構造を調べてみよう。

分解するにあたっての注意点は、内部のガスを完全に抜くこと。

ガスが残っている状態で缶に穴を開ければガスと共に塗料が吹き出し、悲惨なことになりかねない。

スプレー缶をさかさまにしてノズルを押し続け、残ったガスを抜いてやる。
また、溶剤も入っているので風通しの良い場所で行うか、塗装用マスクをつけることをお勧めする。

缶を分解する方法はいろいろあると思う。
底面を缶切りで切ってゆく方法があるが、今回は内部構造を見るためであるから、缶上部を金ノコで切り取る方法をとった。

いっぺんに切ろうとせず、周りを少しずつ切ってゆくときれいに切れる。

切ってゆくと、切りくずとともに残った塗料が出てくる。
あらかじめ、新聞紙などで床を養生しておくことをお勧めする。

切り取りが終わった。

中には撹拌用のビー玉2つと塗料が少し残っている。

塗料はまだ液状でゲル化していなかったため、取り出してビンに保存した。
先ほど書いたように、冷凍庫で保存してやればしばらく持つ。少量だが小物のハケ塗りなどに使用できる。

硬化剤の入っていた内部の缶。

根本部分はこうなっている。

ノズル部分と硬化剤の缶を分離してみる。

仕組み

ノズル部分の内側を見ると、金属製のピンが見える。

イサムエアーウレタンは、使用開始時にレバーを強く押し込めとの指示がある。

レバーで金属ピンが押し込まれることで、硬化剤の入った内部缶に穴が開けられ、塗料と混じるという仕組みだ。

もちろん一度穴が開いてしまうと元に戻すことはできない。

図に描くと下のようになる。

レバーを押し下げることで、赤色で示した金属ピンが硬化剤の缶の封印板を突き破るようになっている。
説明書に、よく撹拌しろ、と書いてあるのは硬化剤を内部の缶から完全に外に出すためなのである。

ソフト99コーポレーションが販売している「ウレタンクリアー」も下部に金属ピンが出ており、同じような仕組みになっていると思う。

おわりに

今回は2液ウレタンスプレーの構造を調べてみたが、意外とネット上にはそういった情報は少ない。
ほとんどが塗り方のノウハウや使い方、注意点の記事や動画だ。

確かに仕組みを知っているからといってどうなるものでもなく、そんなことに興味を持つ人も少ないのだろう。

しかし、モノの原理や仕組みを知っておくのは、よく経験することだが他への応用や、イザというときの助けにもなる。

チコちゃんではないが、ボーっとして生きていないよう、いろいろ疑問や興味を持って過ごしてゆきたい今日この頃である。