寿命になったクルマ用バッテリーは甦るか?(パルス充電器編)

以前、サルフェーション除去の実験で使用していた寿命バッテリー。
事情で実験は中断してしまったが、このまま放置しておくのも可哀そうだ。

そこで、前回購入した「全自動パルス充電器 OP-BC02」の「メンテナンスモード」でどこまで回復するか試してみることにした。

その結果・・・測定上は「Good Battery」へ回復することができたのだ!

実は電解液が減っていた

以前、サルフェーション除去で、デサルフェーター回路を取り付けて数か月実験を行っていた。

寿命になったクルマ用バッテリーは甦るか?「デサルフェーター始動編」

確かに数値は多少改善してゆくものの、際立っての変化は見られない状態だった。

まるで、怠慢なダイエットをしているような感じだ。

それなりの効果は感じられるものの実使用に耐えるまでの回復には、かなりの時間がかかりそうな雰囲気。

そうこうしているうちに実験を中断せざるを得なくなってしまい、バッテリーは放置状態に・・・

そのバッテリーは、パナソニック社製「カオス 100D23L」
5年間使用したがセルモータの回転も悪くなり、寿命と判断して交換したものだ。

使えぬものをこのまま置いておくのもねぇ・・・

そうだ、ふと思いついた。

前回購入した「全自動パルス充電器 OP-BC02」「メンテナンスモード」というものがある。

これをこのバッテリーで試してみようと思った。


この「メンテナンスモード」、メーカーの説明ではこう謳っている。

「定電圧・低電流のパルス充電をおこなうことで、少しずつバッテリーを活性化させ、回復を目指す機能。」

定電圧はともかく、” 低電流 ”ってなんだ?

動作の詳細はよくわからないところだが、パルスと充電コントロールで「サルフェーション」を除去してゆくのではないかと推測。

 ひょっとするとうまくいくかもしれない・・・

ためしてガッテンになるか、ためしてガックンになるか・・・ためしてガッテンは終わってしまったな・・・

が、その前にちょっと気になることがあった。

実はカオスについてのCCA値や充電率を調べるためネットを探っていた。

すると、「カオスバッテリーは電解液は減る。そのため補水が必要。」との記事を見つけた。

さらにYouTubeにも注意喚起する動画があった。

「7年間カオスバッテリーを選び続けてきましたが驚愕の事実を知る事になりました汗」

7年間カオスバッテリーを選び続けてきましたが驚愕の事実を知る事になりました汗

そして、メーカー(パナソニック)が投稿している動画も補水しろと言っている。

カオス 補水の必要性と手順 | caos パナソニックカーバッテリー | Panasonic

カオス 補水の必要性と手順 | caos パナソニックカーバッテリー | Panasonic

どうなってる?
バッテリー上部のラベルには「減液コントロールシステム(補水不要タイプ)」と書いてあるではないか!!

”不要”と書いてあるからには、水の補給は不要と思うだろう。

よくある半透明ケースのバッテリーなら、揺らせば液面を確認することができるが、このカオスはそうではない。
ケースが不透明な青色のため、外から見ても電解液の量がわからないのだ。
(ただし、充電状態や液不足を示すインジケーターが上部に付いている。見づらいけど・・・)

試しに上部の黄色いキャップ(液口栓)を外して液面を見てみた。

するとかなり液が減っている。特に、中央付近のいくつかのセルは電極板が水面から頭が出ているほど。

これに気付かなかったとは迂闊だった。

早速、精製水を補充。ちなみに入れる目安は以下のようになる。

 出典:パナソニック

クルマいじる人はご存じだと思うが、補水の水はバッテリー補充液か精製水を入れるようにする。

水道水や井戸水はナトリウムイオンやカルシウムなど不純物が多いため、化学反応を阻害し劣化を早める。
だから、人間には良いけど、「南アルプスの天然水」とかはダメなのである。

ところで、「南アルプスの天然水」と「北アルプスの天然水」の違いは何なんだ?

メーカーサイトにも補水方法の説明がある。

「パナソニックバッテリー補水の必要性と手順」
https://panasonic.jp/car/battery/support/water.html

ひょっとすると、デサルフェーション実験の進行が遅かったのは、液不足が影響していたのかもしれない。

バッテリー状態を計測

さて、「メンテナンスモード」を始める前に、現在のバッテリー状態を見ておくことにしよう。
(ただし、測定方法に不具合があることが、あとで判明するのだが、その話は後述する。)

いつものBA101バッテリーテスターで「Quick Test」をおこなう。


パラメーターは「60Ah」を指定した。
どうして60Ahかと言うと、ネットで「100D23L」の5時間率容量を調べたところ、どうも58Ahらしい。
そこで、近似値として60Ahを選んだわけだ。(最小単位が5Ahごとのため。)

測定すると、


※デサルフェーター実験時の時とパラメータが違うため、想定CCAが”480″になっている。

表にしてみる。

SOH(%) SOC(%) CCA(A) 電圧(V) 内部抵抗(mΩ) 想定CCA 状態
26 98 245 12.93 12.04 480 REPLACE

■SOHは「State of Health」の略。健全度や劣化状態を表す指標。 初期の満充電容量(Ah)を100%としたとき、劣化時の満充電容量(Ah)の割合。
■SOCは「State Of Charge」の略。充電率または充電状態を表す指標。
■CCAは「Cold Cranking Ampere」の略。温度-18℃下において、SOCが100%から定電流で放電した場合の30秒目の電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値。
■内部抵抗はバッテリー内部の抵抗値。

充電率(SOC)はあるが、SOHがかなり低く、CCAも低い値を示している。
(但し、この値は正確でない。理由は後述。)

メンテナンスモード始動

全自動パルス充電器「OP-BC02」の充電クリップをバッテリーに接続し、プラグを電源コンセントに差す。

電源スイッチを押し、電源がオンになったら、機能選択ボタンで「メンテナンスモード」を選べば、メンテナンスモードでの充電が始まる。

8セグに ” ”と繰り返し表示されてゆく。これでしばらく放置だ。

念のため、液口栓はゆるめて、ガスが抜けるようにしておいた。

かけっぱなしにするのではなく、約2時間~5時間経ったらいったん停止するようにした。
(尚、夜間就寝時はメンテナンスモードは休止とした。)

これを、数日かけて、トータルで約30時間おこなった。

また途中で、わざと放電をおこなった。

これは、取説に、

メンテナンスモード時、表示が「三」のままで、充電器内部のリレーで断続音がしない場合、バッテリー電圧が基準電圧に達したため機能を停止した。

と書かれている。

表示が「」のまま数回停止したため、過充電を防ぐのと、放電サイクルを入れることで、サルフェーション除去を促すことができるかもしれないと考えたからだ。

放電は12V、36Wのクリプトン球をつなぎ、約3時間ほど放置した。36Wの電球で約3Aの電流が流れる。

これを2回おこなった。

(放電用電球)

結果

バッテリーテスターで測定。

※メンテナンスモード終了後、翌日に測定。

SOH(%) SOC(%) CCA(A) 電圧(V) 内部抵抗(mΩ) 想定CCA 状態
64 98 385 12.69 7.70 480 GOOD BATTERY

なんと、CCA値が385となり、状態も「GOOD BATTERY」となった。

期待以上に回復することができたようだ。

バッテリーテスター使用時の注意点

と、ここまで読んでいただくと、凄い回復を見せたようなストーリーになっているが、実は裏がある。

もちろん、「メンテナンスモード」実行後のバッテリーテスター表示は正しい。
(いつも、数回測定し、中間値ぐらいの画像を撮って、記事に載せている。)

問題があるのは、「メンテナンスモード」実行前の値。

実は、「メンテナンスモード」実行前は、バッテリー端子にバッテリーターミナル(金具)を取り付け、その金具にプローブクリップを挟んで測定していた。

ターミナルは、本来、バッテリーに車両配線をつなぐ目的のものだが、以前のデサルフェーターなどの回路や、放電用電球がつなぎやすいように、単体で取り付けていたのだ。

(これがバッテリーターミナル。)

(バッテリー端子に取り付けた状態。)

これが曲者だった。

ある時、何気なく、バッテリーターミナルを外して測定してみると、その測定値に違いがあることに気づいたのである。

バッテリーターミナル経由で測るときと、そうでないときで測定値が異なる。

充電率(SOC)は変わらないものの、SOH、CCA、内部抵抗の値が明らかに悪くなるのだ。

これはなぜか?

普通考えると、バッテリー端子にターミナルをしっかりねじ止めすれば、導通に問題はないと思うだろう。

ところがどっこい、そうではなかった。

バッテリー端子は、金属の鉛になっている。

試しに濃い灰色をした端子の表面を削ってみると鮮やかな金属光沢が出てくるのがわかる。しかしこれは次第に黒ずんでくる。

鉛は酸化されやすい。時間の経過と共に表面に酸化皮膜がつくられてしまうのだ。
そして酸化皮膜は抵抗となる。

ということは、黒ずんだバッテリー端子に、何も考えず接続ターミナルを取り付けると、微小な接触不良を起こすということになる。

バッテリーテスターは、高周波のパルスを与え、コンダクタンス(電流の流れやすさ)を測定し、CCA値に変換する。

そして数ミリオームというバッテリー内部抵抗値を導き出す。

1ミリオームは1オームの僅か1000分の1だ。
ごくわずかでも接触不良があれば測定値に影響を与えるのは容易に想像できるだろう。

但し、通常のクルマの使用であれば、大電流が流れるため微々たる接触抵抗は影響しない。
(酸化被膜が大電流により破壊されるから。)

というわけで、バッテリーテスターを使用する場合は、バッテリー端子直に接続するのが正解らしい。
できれば、テスターのプローブクリップを少しこじって鉛に食い込むようなつけ方をすれば完璧の母だと思う。

おわりに

今回は、回復実行前の” 初期値 ”が信頼の置けないものになってしまったが、自動パルス充電器の「メンテナンスモード」の効果は認められるようである。

但し、クルマには実装していないため、セルモータの回転具合や実走行での調子は確認できていない。
今後、状態変化の経過観察は必要かと思う。(だから、”測定上は回復した。”という表現にしているのですよ。)

このバッテリーをもう一度、サルフェーション蓄積させて、再度回復の実験を行えばよいのだが、時間もかかるだろうし、ちょっと無理っぽい。

少し先になるが、寿命バッテリーが手に入るかもしれないので、もし入手できたら同様の回復テストを行ってみたいと思っている。