今回は「ライトモニター」の製作記事。
「ライトモニター」とは現在どのライトが点灯しているかをLEDインジケーターで表示してくれるものだ。
無くても困らないけど、あると何かと面白いのである。
まずはちょっと理屈が多くてウザい【設計編】である。
ライトモニターがほしい
世の中で「ライトモニター」と言うのかどうかは分からないけれど、ここでの「ライトモニター」とは自車のブレーキライト、スモールライト、ヘッドライトの点灯状態をLEDインジケーターで表示してくれるものだ。
実はこの「ライトモニター」は前車デリカ D:5のときも付けていて、評判が良かったので数台に取りつけたことがある。
※ブレーキライトをブレーキランプ、ヘッドライトをヘッドランプという言い方もするが、ここでは全て「ライト」と表現する。
このライトモニター、無くても別に困りはしない。
ブレーキライトはフットブレーキを踏めば点灯するし、今のクルマは暗くなればヘッドライトやスモールライトも勝手に点灯し、明るくなれば勝手に消える。
それに昔からメータパネル内にもライト点灯のインジケーターがある。
更にマイナーチェンジ後の新型ヴェゼルは、メーターパネル内にもライト点灯状態が表示できるようになっている。
そこには、ヘッドライト、ブレーキライト、左右ウインカーの状態がアニメーションで表示される。
しかしながら、メータパネルのマルチインフォメーションを使用するため、エネルギーフローや燃費など他の表示をしている場合は見ることができない。
液晶ディスプレイなのだから、プログラム次第で如何様にもなるのだろうに、ちょっと下手くそな設計だと思う。
マイナーチェンジのおまけでこんな表示もできますよ、ぐらいの感じなのだろうか。利便性を考えると?が付く。
一部のレーダー探知機では表示を自由に組み合わせられるカスタマイズ機能がある。
高価なクルマなのだから、そのぐらいのことはできそうなのにちょっと残念。
そんな話しを、ディーラーの営業さんに言ったことはあるが、たぶん実現はしないだろうけど(笑)
自動車用ソフトウエア開発の人材不足という点もあるかもしれない。
そんな余計な?機能を考えるなら、もっと本来の仕事をしろ!と怒られてしまうだろう。
最近は開発した自動車用ソフトウエアを企業間で売買できるBtoBマーケットプレイスの「SDVerse」が動きはじめたので、いつの日か実現するかもしれないが。
まあ、ちょっと愚痴っぽくなったが、このライトモニター、あると楽しいし重宝する。
特に夕暮れや薄暗い木陰に入ったとき、暗さに合わせてスモールライトやヘッドライトが自動点灯するが、周りは薄明るいためヘッドライトがついているのかどうかわからない。
また強い雨の日などはヘッドライトが点灯しているのかどうか分からないこともある。
なんでも自動化されるのは便利なのかもしれないが、何かが人間の感覚から隠されてしまう気分になる。
今どうなっているのかを知りたいと思うのは不安な気持ちの裏返しなのかもしれない。
ライトモニターがあれば、「おお、今点灯した。」、「今消えたぞ。」ということを容易く知ることができる。
だからどうだっていうことでもないが、それが楽しいのである。
そういった事は、やたらあちこち光ったり点滅したり、スイッチがやたら付いているのが好きなコックピットフェチ、光モノヲタク、スイッチマニアにはたまらないことでもある。
そして、ブレーキライトではこんな話しがある。
今のクルマはフットブレーキを踏んでいる時だけブレーキライトが点灯するとは限らない。
EVやハイブリッド車では、回生ブレーキが働いた時、ある条件下でブレーキライトが点灯する仕様となっている。
回生ブレーキはアクセルペダルを離した時や下り坂でモーターを発電機(ジェネレータ)として使い、発電負荷をブレーキとして用いる。
これによりフットブレーキを踏まなくても、減速(制動)をすることができる。
しかし、フットブレーキだろうが回生ブレーキであろうが、減速することに変わりはない。
もし、車間距離を執拗に詰めてくるイラチなおばさんやおじさん(最近はおねえさんも)が、ブレーキランプも光らず急減速したらビックリするだろうし、下手くそなおばさんは追突するかもしれない。
だから回生ブレーキでも、急激な減速をした場合は、ブレーキランプを点灯しなければならないことが法令で決められている。
この法規は2011年に制定されているから結構古い。(適用は2014年以降の型式認定を受ける車両から。)
要約すると以下のようになる。
回生ブレーキの動作によるブレーキライトの点灯が、減速度 0.7m/㎨ 以下では点灯禁止、0.7m/㎨ を超え、1.3m/㎨ 以下では任意で点灯。つまり点けるか点けないかはメーカの判断に委ねる。
そして減速度1.3m/㎨ を超える場合は点灯しなければならない、となっている。
㎨という単位はあまり見たことが無いが、これはメートル毎秒毎秒と言い、加速度を表す。
じゃあ、ブレーキライト点灯義務である「減速度1.3m/㎨ を超える場合」とはどれくらいの減速なのか?
ちょっとピンと来ない。
これは、ある速度で走っていたクルマが1秒間に1.3m/sを超える減速をおこなったときである。
まだよくわからない。そこで1.3m/㎨ を時速に直してみる。すると4.68km/hとなる。
まあざっくり言って5km/hだ。
回生ブレーキによって1秒間におよそ5km/hを超える速度低下をする場合はブレーキライトを点灯しなさいよ、ということだ。
1秒で5km/hの速度低下というのはそれほどの制動ではない。まあ、フットブレーキを軽めに踏んだ程度だろう。
しかし、1秒で20km/hも減速させたらどうだろう。なかなかのブレーキだ。この場合、加速度は-5.5m/㎨となる。
恐らく、安全を考慮して最低を1.3m/㎨にしているのだろう。
もし気になるのであれば、自分で計算してみると良い。
生活や実務に役立つ高精度計算サイト 等加速度運動(加速度を計算)
また法令については以下にその文書(pdf)が存在しているので、確認されると良い。
国土交通省 自動車基準の国際調和、認証の相互承認等に関する「道路運送車両の保安基準」、「装置型式指定規則」及び「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の一部改正について
ということで、回生ブレーキによって知らず知らずのうちにブレーキランプが点灯している場合があるということだ。
確かに、ニッサンのe-POWER車ではアクセルペダルを戻して減速するとブレーキランプが点灯するらしい。
ホンダの新型ヴェゼルの場合、アクセルペダルを戻しても、そう強い回生ブレーキが働くことはない。
しかしパドルシフトレバーが付いている。
(たまにパドルシフトの存在をいぶかるヤフー記事を見かけるが、まあ、きっとこれの便利さ、楽しさをよく知らない人が書いてるんだろうね。)
これは機械的に変速ギアをシフトするものではなく、減速セレクターと呼ばれるもので、発電負荷の度合いを変えて回生ブレーキの効き具合を変えるものだ。
だから意図的に回生ブレーキでの急減速をすることが可能になっている。この時、先のブレーキライト点灯条件に当てはまれば、ブレーキライトが点灯することになる。
ずいぶん話しが遠回りしてしまったが、ブレーキライトのモニターがあれば、こんな時に点灯するんだと知ることができるわけだ。
今のところ、峠道を行き来したが、それほど急な下り坂でもなかったため、減速セレクターを目一杯使ってもブレーキライトが点灯することはなかった。
まあ、これは今後検証してゆくとしよう。
ライトモニターの設計
部品と回路の検討
設計といっても大袈裟なものではない。ブレーキライトとスモールライトについては簡単である。
これは単純に、ブレーキライトとスモールライトの電源ラインから分岐させて、LEDを点灯させれば良いだけ。
問題はヘッドライトである。
ヘッドライトの点灯有無は昔のクルマであれば、単純に電源ラインかヘッドライトリレーのドライブ信号のオンオフ信号を拾ってくれば良かった。
しかし今のクルマはコンピューターとの通信によって点灯させるようになっている。
具体的にはCAN(Control Area Network)というシリアル通信を使ってヘッドライト内部のコンピューターへ指令を送り点灯制御を行っている。
なぜそんなことをするかというと、ステアリングの操舵角や速度によってヘッドライトの点灯方向を変えたり、ハイビームとロービームを自動で切り替えたり細かい制御を行うためだ。
新型ヴェゼルのマイナーチェンジ後ではアダプティブドライビングビームが搭載され、歩行者とか他車への眩しさ軽減のため照射範囲までコントロールするようになった。
このような複雑なコントロールは単純な信号線では対応できないのである。
ということはCANのパケットをデコードして、ライト状態を知るのか?
いやいや、確かにCANデコーダーもあるが、そんなことをしていたら、とても大ごとになってしまう。
単純にヘッドライトが点灯したら、LED1個を光らせようというだけの話しなのだから。
そこで考えてみる。ヘッドライトが点いているかどうかは、その灯りを検出すればいいんじゃね?
そう、ヘッドライトの光をセンサーで検出してやれば良いのだ。そう考えると話しは進みそうだ。
しかし、そこにはいくつかの解決すべき点がある。
まず、光をどうやって検出するか。
もっと細かく言うと、光センサーをどこへどうやって設置するか。
センサーの回路も考えないといけない。
また外光による誤動作を防ぐ必要がある。
数日、いろいろ調べたり考えた結果いくつかの方法を思いついた。
まず、光の検出について。
Amazonを探ると「光センサーモジュール」なるものが見つかった。
これはArduinoなどで使う実験用モジュールらしい。もちろん中華製である。
実際使えるかどうかは実験してみないとわからないけれど、仕様としては使えそうだ。
早速注文。
そして届いたモジュールをあれこれ実験してみたら、ちゃんと使えそうだ。
動作保証電圧が3.3V~5Vなのでクルマで使うには少々使い勝手が悪いが、安価で形状も小さいうえ、TTLレベルやアナログ出力を備えていて調整ボリュームもあるのでなかなか優秀。
なんたって、5個で約700円という激安である。(5個もいらないけど。)
まあ、光センサーの設置方法についてはちょっと考えることにしよう。
とりあえず、この光センサーモジュールを元に、回路を考えてみる。
まずは誤動作対策。
日中に明るいが光センサーに当たると、ヘッドライトが点灯しているものと勘違いしてしまう。
そこで、スモールライトが点灯しているときだけ、光センサーモジュールを働かせればよい。
つまり暗くなってスモールライトが点灯したとき、その電源で光センサーモジュールを動作させ、ヘッドライトの点灯有無を検出させるというからくりである。
調整ボリュームで感度をちゃんと調整してやれば、夜間よほど明るい外光が入ってこない限り誤動作することはないだろう。
回路図は以下のようになる。
光センサーモジュールはDO(Digital Out)端子を使用する。
DO端子は暗い時Hi信号(電源電圧レベル)を出力し、明るい時Lo信号(0V)を出力する。
このため一段目のトランジスタで信号を反転をさせている。
二段目のトランジスタは単純なLED点灯のスイッチの役目だ。
仮で回路を組む
まず、回路図を元にヘッドライトの部分だけブレッドボードに組んでみる。これで正しく動作するか検証するのだ。
スモールライトのラインに電圧を与えて、光センサーにスタンドの光を当てたり、手をかざして暗くしたりして、ちゃんとインジケータLEDが点灯、消灯することを確認する。
点灯の感度は光センサーモジュールの半固定抵抗で調整してやる。時計回りへ回すほど感度が鋭くなる。(明るさに反応しやすくなる。)
回路の抵抗の値などは適当にしたが、うまく動作するようだ。
おわりに
次回は、基板への回路の組み立て、LEDインジケーターパネルの製作、ブレーキライトやスモールライト信号の取り出し、ヘッドライトへの光センサー設置方法などについて書いてみる。
※今回は技術的な話しが多いため、誤記、回路の誤り等あるかもしれない。もし気づかれたらご指摘頂くと幸いである。