寿命になったクルマ用バッテリーは甦るか?「デサルフェーター始動編」


寿命を迎えたクルマ用の鉛バッテリー。
普通なら、新品に交換すれば済む話だが、「デサルフェーター」なるものを取り付けると再生できる可能性があるという。

今回、それを取り付けて、その効果を追ってみることにした。
とりあえず今回は「デサルフェーター始動編」ということで。

リビルドバッテリーというものがある

我が家のクルマのバッテリーもそろそろ寿命に近くなってきた。

セルモーターの回転が弱くなってきたのは感じていたが、点検時ディーラーからバッテリーそろそろ寿命ですとの指摘。

このバッテリー、使用5年経過している。
ハイブリッド車でも、アイドリングストップでもないので、ごく普通の鉛バッテリーだ。
前のバッテリーは7年持ったが、今回はそこまで持たなかった。

原因として乗り方に問題があるのはわかっていた。
ほとんど買い物でしか使っておらず、あまり遠出もしなかったのが原因のひとつなのだろう。
つまり軽い充電不足が起こっていたのだと思う。

さて、ディーラーで交換するとそれなりの出費になるので、自分で交換するすることにする。

これまで、Amazonなどで、国産メーカの新品バッテリを手配していた。
ネットで買うと多少安い。でも一流メーカー品であればそれなりの価格はする。

そこで、ひょっとしてと思い、初めてオークションサイトを探してみた。

すると、規格に合うバッテリーがずいぶん安く出品されている。見ると「リビルドバッテリー」とのこと。

リビルドだからもちろん中古品。ちょっと怪しい気もするが、保証が6ケ月間付いている。

  出典:ヤフオク

はやる気持ちを押さえて、まずは「リビルドバッテリー」について調べてみる。

すると、いろいろ情報が得ることができた。

現在の車載用鉛バッテリーは、構造的な寿命に達していないものの、不活性物質が電極に堆積し、その結果、期待通りの電流が取り出せなくなり寿命になっているとのこと。

この「不活性物質」を取り除く等のメンテナンスを施し、新品性能とは行かないまでも、十分に実用度があるものに再生したのが「リビルドバッテリー」として売られているらしい。

中には怪しいものもあるかもしれないが、なんとなく様子がわかってきたし、6ケ月間保証がついているということなので、ダメ元で購入してみた。
(尚、この記事を書いている時点で、一か月以上が経過するが、特に問題なく動いている。
 セルモータも快調に回ってくれている。)

下の画像の左側が寿命となったバッテリー、右がリビルドバッテリー。
(貼り付けられていた”55D23L”のテプラを剥がすと、実際は”75D23L”だった。)

サルフェーションとは

では、このバッテリーの寿命=「不活性物質」の蓄積とはなんぞや?ということで調べてみる。

一般的クルマ用バッテリーは、鉛(極板)と希硫酸(電解液)で構成されている。

バッテリーが放電するときは化学反応により硫酸鉛(PbSO4)が発生する。これが「不活性物質」。
しかし発生した硫酸鉛は、充電をすることによって再び電解液中に還元されてゆく。

これが通常バッテリーの充放電サイクルで、バランスの取れた充放電サイクルを繰り返せばバッテリー寿命は伸びるわけだ。

しかし、放電ばかりを繰り返したり、長期間放置状態で自然放電させてしまうと、電解液中に戻るはずの硫酸鉛が極板表面で結晶化してしまう。
結晶化した硫酸鉛は負極(マイナス側)電極の表面にしだいに白く蓄積されてゆく。

そして結晶化が発生すると、通常の充電では分解されず、さらに蓄積され続けてゆくことになる。

結晶化硫酸鉛は電気を通さない物質であるため、極板に付着する量が増えてゆけば、それが抵抗となり充電しても充電できず、放電時も十分な電流が取り出せなくなってしまう。
つまりバッテリーの内部抵抗が高くなるわけなのだ。

だから、バッテリー電圧は正常なのに、セルモータの回転が鈍くなったりする。

この現象が、世の中で一般に言われているサルフェーションによるバッテリーの劣化なのである。

ちなみに「Sulfation」は日本語で「硫化」という意味なのだそうだ。

つまりサルフェーションの重症化=バッテリの寿命、と判断されることとなる。

デサルフェーターとは

そこで、まだ使えるはずのバッテリーの極板に付着した「硫酸鉛」を剥がす方法が無いものかと考えた人たちが居た。
まあ、バッテリーを分解してヤスリでゴシゴシというのは現実的ではないから、電気的に外部からの刺激で悪いやつらを引っぺがす方法を編み出したわけだ。

それが、「デサルフェーション回路」とか「デサルフェーター」というもの。

中には化学的添加物(炭素微粉末やゲルマニウム、リグニン、特殊ポリマーなど)によって取り除く方法もあるらしいが効果は限定的であるらしい。

「デサルフェーター」は高周波、高電圧のパルスをバッテリーに印加し、バッテリー性能を回復させるもの。

これを聞くと、「オカルト」グッズのひとつなんだろうと思う人も多いのではないだろうか。

わたしも、最初は、貼れば燃費が上がるシールだとか、そういった類のものだろうと思っていた。

しかし調べていくうちに、どうもそうではないらしい、一応理にかなったモノであることがわかってくる。

機能的には数十から数百KHz台のパルスを作り、それでコイルを高速スイッチングすることで発生する高電圧をバッテリーに印加する仕組み。

科学の実験で、電磁石を作り、その両電極に触れながら電池を入れたり切ったりすると、ビリッっと来てびっくりしたことがある人がいると思う。
あれの応用である。

なぜ高周波、高電圧パルスを加えるとサルフェーションが除去できるのか?

サルフェーション(結晶化硫酸鉛)は負電極の表面に蓄積される。
ということは電極表面に電流を流せば、効率的に結晶化硫酸鉛を分解(還元)できるのではないか。
しかも電極表面に流せば、その電力も小さいもので済ませられる。

では、電極表面だけに電流を流したいときはどうするか?
それは高周波電流の「表皮効果」を利用すればよいわけである。

「表皮効果」とは交流電流が導体を流れるとき、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れほど低くなる現象のことである。
つまり周波数が高くなるほど電流が導体表面へ集中する。

ちなみにこんなデータがある。

銅線の場合、周波数に対する表皮電流の深さは下記のようになる。
60 Hz → 8.57 mm
10 kHz → 0.66 mm
10 MHz → 21 μm

銅の場合だが、単線(より線ではないという意味)では10KHzの場合、表面の1mmも満たないところしかほぼ電流が流れないのである。

これを応用して、デサルフェーターを設計すればよい。
但し、どれくらいの周波数、電圧、時間を与えればよいかは、ネット上ではあまり出てこない。
外部気温も影響するだろうし。

このあたりのノウハウは企業秘密に近いのだろうか、ケンタッキーフライドチキンのスパイス混合比と同じである。

「デサルフェーター」を手に入れる

何はともあれ、実験にあたってまず「デサルフェーター」を手に入れなければならない。

当初は、ネット上の回路を参考に自分で作ってみようと思っていた。
しかし秋月電子などで部品を手配して、手持ち部品を使ったとしても、完成品を買った方が早いし、コスト的にも大きく変わらないようだ。

ちなみにAmazonで「サルフェーション除去」で検索をかけると、山のように出てくる。
しかも安いものでは千円台からある。

Amazonのカスタマーレビューは半分以上は当てにならない?、と思っているから、買ってみて試してみるしかない。

あれこれ選ぶうちに、ヤフオクに出品されていたものが、どうも良さそうなので、今回、これを購入した。

この出品されている「デサルフェーター」、回路設計がしっかりしているようで、2時間に及ぶ回路解説がYouTubeに上がっていたりする。
興味のある方は見てほしい。ただし2時間耐久ですぞ(笑)

デサルフェータ解説

どうやってバッテリーの回復度合いを確認するか?

バッテリーは先日取り外したものを使うとして(もっとひどいのが家にあったがしばらく前に廃品業者に売ってしまった。)バッテリーの回復度合いを客観的に測らなければならない。

セルモーターの回りがなんとなく良くなったよ~では、説得力が無い。

そこでバッテリーテスターを使用することにする。
このバッテリーテスターはバッテリーのCCA値、SOH(バッテリー健康度)、SOC(充電状態)、内部抵抗値、電圧を測ることができる。


CCA(Cold Cranking Ampere)(コールド・クランキング・アンペア)については、検索すればあちこち解説が出てくる。

本来のCCAの試験方法は以下の通り。

温度-18℃下において、SOC(バッテリーの充電率)が100%からCC放電(定電流放電)で放電した場合の30秒目の電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値がCCAとなる。
ここでCC放電の電流値を徐々に上げていき、7.2Vを切った電流値の前の電流値をCCAとして採用するというように測定してゆく。

なんだか読んでもよくわからないが、要は極低温の状態でもセルモータを回せる(クランキング)電池性能があるかどうかの判断基準であるらしい。
そんな環境で孤立した場合、エンジンがかからなければ死も意味するわけで現実に即した性能判断基準になっているわけだ。
ちなみにCCAの単位はA(アンペア)である。

しかし、バッテリーをテストするのに、-18℃を作り出すなんて一般家庭では不可能。

そこでバッテリーテスターはどうするかというと、バッテリーの直流、交流抵抗を測定し、コンダクタンス(電流の流れやすさ)を測定する。
そして、それをもとにCCA値に換算して表示するという仕組みをしているようだ。

だから、基準となる”初期状態”のバッテリーCCA値を入れてやらないと本来は現在のの正しいCCA値を得られない。
国産バッテリーにはCCA値の記載が無い物も多い。
しかし、そこは素人の適当さで、とりあえずの近似の値を設定しておけばおおよその判断基準にはなる。

ちなみにテスト時の波形(”TEST”表示時、バッテリー両極で観測される波形)は以下の様なものだった。
これが、連続的に数秒間観測できる。

デサルフェーター効果実験

では実験。

購入した「デサルフェーター」は、通常は車載し、オルタネーター(充電)が作動したときに動作するように設計されている。
これは動作しっぱなしでバッテリーを過放電させてしまうのを防ぐためと充電時の還元反応との相乗効果のためだろう。

今回はバッテリーをクルマから降ろした状態での実験になる。
そこで、充電器を用意し、充電環境を作って、「デサルフェーター」が動作するようにした。

今回の実験で使用するバッテリーは「パナソニック製 CAOS 100D23L」。

まず、何もしない状態で、このバッテリーの性能を測定してみる。

テスターを使用するにあたり、初期値(新品の時のバッテリーCCA値)を設定する必要がある。
(設定すると、その値は覚えていてくれる。)

「caos 100D23L」のCCA値は600程度であるらしいので、近いであろう値(JIS規格で「95D31」CCA値565)を指定した。

まあ、先にも書いたが、前後の比較対照のためなので、そんなにシビアな値でなくても近い値でよいでしょう。

測定すると、バッテリーをしばらく放置していたので、やや放電していた。
テスターで測定すると電圧は12.5V程度、充電率は90%となっていた。

このときのテスターの値(尚、測定ごとにバラツキがあるので、3回測定し、平均を取った。)

SOH(%) SOC(%) CCA(A) 電圧(V) 内部抵抗(mΩ) 初期CCA 状態
13 90 210 12.54 13.98 565 REPLACE(要交換)

これで、まずは充電してやる。朝9:00に開始して、15:00で充電器を外した。
この状態で測定すると

SOH(%) SOC(%) CCA(A) 電圧(V) 内部抵抗(mΩ) 初期CCA 状態
18 98 250 12.92 12.69 565 REPLACE(要交換)

充電しただけでも幾分、状態が良くなったようだ。
ちなみに、
■SOHは「State of Health」の略。健全度や劣化状態を表す指標。 初期の満充電容量(Ah)を100%としたとき、劣化時の満充電容量(Ah)の割合。
■SOCは「State Of Charge」の略。充電率または充電状態を表す指標。
■CCAは「Cold Cranking Ampere」の略。温度-18℃下において、SOCが100%から定電流で放電した場合の30秒目の電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値。
■内部抵抗はバッテリー内部の抵抗値。

これから「デサルフェーター」を接続するのだが、その前にに負極(マイナス極)の状態を撮影した。
それが下の画像。(白く円形に輝いているのはスコープカメラの照明LED。)

一面が白色に覆われていて、まるで大理石の模様のようだ。
デサルフェーターが動作すれば、これが無くなってゆくのだろうか。

ちなみに正極(プラス極)の画像はこちら。
特に異常な状態は見受けられない。

デサルフェーターは配線をハンダ付けして先端にミノムシクリップを取り付けた。
(右のトグルスイッチはバッテリーが充電中でなくても動作するように改造したためのもの。ツェナーダイオードD4をグランドへパイパスできるようにしてある。)

バッテリーにつなぐと、動作状態の青色のLEDが点灯(実際は高速で点滅)する。
このLEDはパルスを視覚化したものだ。

尚、この装置はバッテリーの電力で動作するので、別の電源や電池は不要だ。

印加されている状態の波形は以下のようになる。
パルスの周波数240kHz、電圧が100Vを超える値になっている。

下記画像はパルス波形を拡大したもの。

これでしばらく経過観察をしようと思う。
直ぐには効果が現れないと思うが、状態についてはまたレポートします。

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